ニューロマジック代表黒井が、変化するマーケティング生態系における最適解を考察
 
 
 
2012.04.13 個別ページ
 
 
黒井
 

最近、社内の「抽象要件の定義と具現化」という勉強会で、「あえてコアとなるブランド価値を語らないサイト」に関してディスカッションしました。

我々は基本的に、戦略立案→スコープ定義→IA設計→デザイン開発→オーサリング+システム開発という流れでプロジェクトを進めてきているのですが、このプロセスだと機能要件は精緻に積み上がるものの、一種大きなジャンプが生まれにくい。よって、社内ではこの基本的なプロセスに対し、"Type B"と言われるプロセスがあり、そこでは「抽象要件」なるものがクローズアップされ定義、具体化されます。「機能←→情緒」「抽象←→具体」という言葉の話しをするとねじれているのですが、要は体験や印象により重きを置いていくアウトプットを出すためのプロセスで、この「抽象要件の定義と具現化」という勉強会はメンバーがType B視点で既存のケースを分析、ディスカッションするものです。

「あえてコアとなるブランド価値を語らないサイト」の内容を少し補足します。目的を達成するために、限られたウェブサイトでの体験をどうするのが最もふさわしいのかを考えると、あえて「ブランドを取り巻く抽象的な連想の集まり=コアとなるブランド価値(ケビン・レーン・ケラー)」をエッセンスとしてもあまり表現しないサイトといった話しです。

概念としては「まぁ、あるよね」ですが、参加者でブランド・マントラを仮に設定しながら、歴史的経緯や競争環境の変化を踏まえ、どういうリテンションや態度変容につなげていくために、こうした表現や体験にしているのか、という話し合いはなかなか面白いものでした。中途半端にしかブランドの認知の幅と深さがないものでは全く別のブランド・ポジショニングに見えかねないわけですが、顧客との間に強いロイヤルティの関係があるブランドが、このタッチポイントの目的、役割と期間を意識しつつ、体験も表現も異なるエッセンスを感じさせるのは興味深いチャレンジですね。

 
 
 
2010.02.23 個別ページ
 
 
黒井
 

プロジェクトにおけるリスクマネジメントの大切さは言うまでもありません。計画したプランを確実に実行し、実際に課題を解決していくために、当初想定できるもの、できないものを含め、様々なリスクを把握、評価、管理していくことが、成果につなげる必須条件です。

先日、サッカーの東アジア選手権で日本男子が3位に終わったことで、岡田監督解任の是非をめぐって様々な発言がマスメディア、ソーシャルメディア上で繰り広げられました。そんな中「岡田続投」を決めた財団法人日本サッカー協会の声明文の中で気になったのが、「監督を交代するリスク」です。

リスクは将来の不確実性です。この「監督を交代するリスク」のように、多くの場合はネガティブなばらつきを差しますが、当然逆のばらつきも存在します。

話しを単純化します。例えば、仮にFIFAのランキングと、ある一つの試合の勝敗がそれなりに相関があるとした場合、想定される結果は相当に厳しいものです。各チームとの評価点の差と、サッカーの引き分けにできる確率の高さ?を考えると、想定される勝ち点は0か1。目標は勝ち点2でしょうか。よって、リスク=将来の不確実性を考えた場合、ネガティブ方向=それ以上悪い結果の幅はあまりない。

とすれば、今の日本代表に求められるのは、実力通りの結果(勝ち点0か1)を確実に生むことではなく、例え、勝ち点0に終わる可能性が大きく上がっても、より大きな成果(勝ち点3以上?)を上げられる可能性を少しでもつくる=ポジティブなリスクをいかにしてつくるのか、であると思います。岡田ジャパンがそれに相当するか否かは、専門家のみなさんにおまかせするとして、一ファンから見ると、「リスクがないのが問題」のように感じられ、違和感を感じました。

自社で所有するメディア、購買できるメディア、そしてソーシャルメディアを中心とした獲得していくメディアという枠で企業のコミュニケーションを捉えた場合、各々のメディアでのコミュニケーションが含有するリスクの中身は大きく異なります。その際には、ネガティブな方向だけでなく、ポジティブなリスクをどう捉え、評価し、また管理するのかという視点も、ROIを高める上で非常に重要であると考えます。

参考:CNET "Multimedia 2.0: From paid media to earned media to owned media and back"

 
 
 
2009.06.19 個別ページ
 
 
黒井
 

サイトの情報アーキテクチャを設計する上で、サイトのスコープ(コンテンツと機能)を、ユーザがどのように情報探索、閲覧行動するのかを理解することは非常に重要です。

例えば、得たい情報ニーズの量や幅として、

・既知情報探索ニーズ(一つある答えを探す)
・探求探索ニーズ(いくつか役に立つものを見つけるまで探す)
・全数探索ニーズ(網羅的に見つかる情報は全部得られるまで探す)

目的の具体性による閲覧行動のモードとして、

・指向性閲覧モード(既知の項目を探す、事実確認等)
・半指向性閲覧モード(なんとなくの目的でいろいろ探す)
・無指向性閲覧モード(無目的、ザッピング的)

がありますが、各コンテンツや機能のサイト内外におけるファインダビリティや、ユーザの情報ニーズにおける競争環境、コンテキストリンクでPullからPushにつなげる目的での粒子化したコンテンツや機能単位の関連性等、適切な情報アーキテクチャを設計する上で、非常に重要な判断基準になります。

Source: 「Web情報アーキテクチャ」、「デザイニング・ウェブナビゲーション
"Information Seeking In Electronic Environments / Gary Marchionini"

 
 
 
2009.05.13 個別ページ
 
 
黒井
 

サービス・製品の顧客の総受取価値は、機能的価値と抽象的価値に分けられます。一方の機能的価値はすべての対象市場に向けたグローバルのバリューチェーン最適化競争によって、その多くが毎日コモディティ化しています。よって、価値の総量を保つ或いは上げるには、イノベーションによって新しい機能的価値を生み続けるか、もう一方の抽象的価値に依存するかしかありません。その抽象的価値を創れるのか、創った後守れるのか、強化できるのかを考える上では、その価値の中核になる「ブランド」価値が最重要となります。

InterbrandのBest Global Brandsで現在参照できる2001年から2008年において、そのブランド価値の変遷を確認してみると、トップのCoca-Colaこそブランド価値はほぼ横ばい(CAGR=-0.48%)ですが、100位(2001年benetton~2008年VISA)を見てみると、年平均18.76%で大きく価値が増加しています。この間、世界のGDPの年平均成長率が9.72%(IMF)ですが、それと比較してもブランド価値のあり方が大きく変化していることが実感できると思います。

例えば、Kevin Lane Kellerの顧客ベースのブランド・エクイティ・ピラミッドのラダーを、顧客が様々な経験によって、アイデンティティ→ミーニング→レスポンス→リレーションシップと上る、或いは横に広がっていくとします。その経験はどこで得られるのかと言えば、様々なソーシャルメディアを含めてWebやモバイルが非常に重要なタッチポイントになるのは間違いありません。よって、抽象的価値を高め、最終的に顧客の総受取価値を高めていくには、ブランドマネジメントの戦略と整合性をとったコミュニケーションがWeb、モバイルで「結果的に」得られるようマネージすることが非常に重要になります。

 
 
 
2009.04.17 個別ページ
 
 
黒井
 

媒体ビークルの無価値化」とは、例えば○○新聞というパッケージの価値がなくなり、個別の記事に価値の基軸が移っていく変化をいいます。「コンテンツ・機能のフラット化」は、マスメディア等が提供するコンテンツ・機能と、CGMのコンテンツが、ユーザの情報接触の仕組み、個々人にとっての価値としても横並びになっていく変化のことです。

テキストで提供される情報に関しては、情報ニーズにミートするフィードを購読し、リーダーで統合管理するユーザーが増えています。Podcastで映像、音声の小さな情報ユニットを購読、EPGで放送局を意識せずテレビ番組を検索しHDRに録画、コーナー単位で視聴する等の行動も、同様の傾向として理解しています。先日のGuardianの記事全文を無料で提供するOpen Platform化も、ビークルとしての存在や、パッケージングされた状態でのヒエラルキーでは、価値に変換できなくなっていく環境変化に適応したものではないでしょうか。

現時点においても、非常に重要な前提条件であると考えています。

 
 
 
2009.04.06 個別ページ
 
 
黒井
 

ユーザは、探索行動の目的を実現するために、短時間に多くの情報と直感的に接しながら探索行動を行います。時間的コストが大きいと簡単に離反してしまう例はよく散見します(例:0.5秒の遅延でユーザ離れ)が、時間に限らずコスト全般(金銭的、時間的、エネルギー、心理的)を避けながら探索行動を行います。例えば、表示されるまでの時間コストだけでなく、直感的に判断しにくい=情報のグルーピングやラベリングの考え方を理解するための時間、エネルギー、心理的コストも大きな障壁であると考えられます。代替情報が存在し、それを選ぶことでの明確な受取価値の低下が見込まれない場合、或いは受取価値の低下に無頓着な場合はより顕著でしょう。

よって、余計な情報閲覧コストを生まないためには、環境やデータ転送量の話しだけでなく、ターゲットユーザがこの瞬間どんなマインドセットでサイトに向き合っているのかを意識することが重要となります。具体的には、粒子化したコンテンツや機能をマインドセットにフィットするようにグルーピング、それぞれの向き合いに的確なラベルをつけ、わかりやすいドアや窓(ナビゲーション)を用意します。その上で、主要なペルソナのユーザーシナリオ上におけるマインドセットを通して「今何ができるのか」や「今どこに飛べるのか」「飛んだ先ではなにができるのか」が、直感的に瞬時にわからない、迷う、誤解する可能性を、極力ゼロにすべきでしょう。

このように情報が表示された後の閲覧コストを避けるIAは、既にユーザが体験しているスキーマ、情報のグルーピング、ラベリングに大きく依存することになりますから、結果として、ユーザ・エクスペリエンスのイナーシャが生まれ、多くの場合それらは尊重すべき内容であると考えます。

 
 
 
2009.03.11 個別ページ
 
 
黒井
 

ROIを最大化するということを考えると、ファイナンスのポートフォリオマネジメントに行き着きます。目標となる成果と投資額によって、リスク(分散)が大きい施策で大きなリターンを狙うのか、逆に小さなリスクで確実な成果を得たいのか、それらの組み合わせは?等々、コミュニケーション投資の内容を設計、管理していくのです。例えば、認知率への影響という視点では、広告枠での訴求は、通常それほど大きなレバレッジが効きません。一方、マーケティングPRへの投資は、マスメディアやCGMによって、レバレッジが大きく効いた成果を上げる可能性がありますが、取り上げられない、思惑とは異なる取り上げられ方をするといったリスクも存在しますので、それも含めて全体のポートフォリオを管理すべき、となります。

ウェブサイトのスコープ(コンテンツと機能)を決定する場合にも、全体のコミュニケーションをポートフォリオとしてとらえつつ、単独ではなく、タッチポイント間、コンテンツ・機能間のシナジーを生かしながら、ウェブサイトの役割を明確に定義する必要があります。さらにこれらR(成果)側=スコープとそのファインダビリティや競争優位性、また最終的なコンバージョンとの相関等だけではなく、I(投資)側も最適化するためには、コストの投下する対象やプロセスも柔軟に計画・遂行していくことになります。

ROIを定量化する調査・分析の現実性や、そのコストが、結果得られるであろう増分成果を超えないもの、短期的・中長期的な経営課題が様々な優先順位で混在し、必ずしもKPIとして明確にしにくいものなど、制約条件は多々あります。しかし、ほとんどすべての市場が急速に縮小し、ゲームそのものが毎日変化している今だからこそ、こうした戦略的なアプローチと仮説ベースのプラニングを、具体的なアクションによって検証しながらリスクをマネージし、PDCAサイクルによるカイゼンによって、継続して安定的に成果を上げていくことが重要なのではないでしょうか。

 
 
 
2009.03.05 個別ページ
 
 
黒井
 

先日、NHK青春ラジカセを聴き、まさに渋谷陽一さんの番組をカセットテープで録音して、トークの中身はもちろん、微妙な「間」まで完全に覚える程繰り返し聴いていた自分を思い出していました。

例えば、渋谷陽一さんの番組が属するのは、ロック全般情報セグメントだとします。当時、地方の小さな町に住む一中学生のロックファンにとって、金銭的、時間、エネルギー、心理的コストが低い同セグメントに属する競合情報はほとんどなく、せいぜい、友達のクチコミと、地元の楽器屋さん、レコード屋さんくらい。ロック全般ではなく、さらにセグメンテーションした、かつ低コストの情報は全くないので、重要性では情報全体の少なくとも4割くらいが週一の渋谷さんの番組で占められていたかもしれません。仮にその中学生にとっての情報価値の総和というものがあり、それが月2,000円だとしたら、800円は渋谷さんの番組の価値だったでしょう。

現在は、莫大な量の元となる情報や、フィルタリングや広い意味でマッシュアップした結果としてのコンテンツが、ほとんど限界費用ゼロで手にはいります。例えば、ロック全般情報というような大きな括りのものから、マイナーなバンドのギタリストの74年頃のアップとエフェクターの型番と、そのセッティングや演奏の動画まで、かなりの確率で思いつくだけの興味、関心が簡単に満たされます。ユーザはそれらの中でBerrypickingしていくわけですから、各個人の興味対象や情報と捉えるパラダイムのバリエーションが、検索行動によって接したBerryに触発されてさらに多くなり、仮にあるBerryが存在しなくても別のBerryを拾い続けるわけですから、個別情報の絶対価値も希薄になりがちな構造だと考えられます。

総務省の「情報流通センサス報告書」が、選択可能情報量の急増を示すSourceとしてよくとりあげられ、平成8年度に比較して何百倍という数値が象徴的に語られています。人間は環境の動物ですから、2桁~3桁、或いはそれ以上増えた選択肢を上手に使う人がもっともっと増えていきながら、そのための統合管理閲覧環境も整備されていくでしょう。仮に以前と情報価値や情報チャネルとしての価値が本質的には変わらないまま、競合プレイヤーが何百倍になり、参入、退出障壁が低いとなると、特別な抽象的価値を持つ一部のコンテンツ以外は、限りなくコモディティ化し続ける可能性が高いかもしれません。

 
 
 
2009.02.24 個別ページ
 
 
黒井
 
認知度が低いBtoB企業や、元々の企業イメージがあまり高くない企業では、「実はこんな良い会社だったとは知らなかった」、「この会社の活動を知って価値あることを行っている会社と理解できた」、「以前の不祥事のイメージが残っていたが、改めて信頼回復に真摯に取り組んでいる姿を知ってイメージが変わった」などの理由で顕著に信頼度が向上することがある。 企業情報サイト調査2008 結果分析 第2回:企業信頼度への効果(日本ブランド戦略研究所)

多くのB2C企業は、ウェブサイトを含むすべてのタッチポイントでアクイジション或いはリテンション目的で、統合的かつ継続的に広く顧客にアプローチしています。例えばU.S.の典型的な消費者が接触している広告は一日5000 ("Studies show that the typical consumer is bombarded by 5,000 advertising messages a day, and the number of ads is expected to increase steadily."-nytimes)と広告のclutterは拍車がかかり、広告以外でも媒体のコンテンツの一部として、或いは販売チャネルでの体験として等々、その情報と体験の量は莫大です。効果性や効率性はともかく、それらの累積によって顧客・市場側には、ブランドの認知、想起する機能的価値、抽象的価値、ブランドに対するジャッジメント、フィーリング等の反応、レゾナンスを含めた大きなブランド・エクイティが創出、維持されています。

関連産業の関係者以外ほとんど認知がなく、一般とのタッチポイントが存在しないB2B企業の「サイトを一度見ることによる効果」は、上記のようなB2C企業のそれと比して非常に大きくなるのは当然ですが、とかく「基本的な企業情報、製品・サービス情報と、IR、リクルーティング関連情報等が、それなりに掲載されているものを安く調達できればいい」となりがちなB2B企業サイトに、「希少なタッチポイント、機会≒ブランドへの影響が非常に大きい」ということを改めて言及する意義は大きいと思います。

すべてのステークホルダーとの(ほとんど)唯一無二のタッチポイントとして、実際のビジネスの効果を得るために、必要なスコープ(コンテンツと機能)を効果的効率的なコミュニケーションにパッケージングして実現しつつ、ブランドが伝えたいエッセンスを感じさせるエクスペリエンスが、同一セグメントで戦う競合や、ユーザの日常の経験の中での、相対的なポジショニングにおいて実現される、そんな風にしっかりマネージしてウェブサイトを構築すべきB2B企業は、実は非常に多いのではないでしょうか。

 
 
 
2009.02.20 個別ページ
 
 
黒井
 

BusinessWeekで、Super Bowl Adのオンラインバズの量にフォーカスした記事がありました。

1位 Teleflora     1464%  488%
2位 Cash4Gold.com 738%  246%
(Brand, Daily Average Interactions(change), Online Buzz ROI) LaunchSquad調べ 「Teleflora's Super Bowl Ad Got Best Online Buzz for the Buck」

最終的に解決すべき課題との相関とはまた別でありつつ、Super Bowl Adという巨大な投資に対して生まれたバズの量を成果として整理してみたものです。最近Nielsen Wireにあったウェブサイトへの流入Super Bowl Ads: The Web Effect同様、KPIとして想定しているプロジェクトも多いでしょう。

1位のTelefloraなどは、メッセージとしても、競合サービスとの機能的差異やポジショニングを直接的に伝えているので、仮にバレンタインで1480万本の花が北米に輸入されるなら、最終的なコンバージョンとの相関も相当期待できるかもしれません。